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機能性食品素材

アンチエイジングと糖化

健康寿命

『人生50年時代』と言われていた数十年前には、いかに長く生きるかということが大きな課題でした。その後、急速な経済成長や食糧事情の変化に伴い、わが国の平均寿命は著しく伸び、現在では『人生80年時代』と言われるまでの世界一の長寿国になっています。しかし反面、生活習慣病の発症率は高齢になるほど高まり、これに起因して 寝たきりや痴呆になるお年寄りの増加が深刻な社会問題となっています。

このような時代背景の中で、近年、『健康寿命』をいかに延ばすかが大きな課題となってきています。『健康寿命』とはWHO(世界保健機構)が提唱した新しい指標で、病気や痴呆、衰弱などで要介護状態となった期間を、平均寿命から差し引いた寿命のことで、つまり私たち一人ひとりが生きている長さの中で、元気に活動的に暮らすことができる長さのことです。長寿国では一般に、平均寿命と健康寿命の開きが大きく、わが国でも最晩年に寝たきりなどになる期間が国民平均6年以上に及んでいるのが現状です。わが国の生存曲線をみると、最終的な円熟期に大変近くなってきていますが、このカーブをできるだけ右側に近づけることが、『健康長寿』につながることとなります1)

この『健康長寿』を延長していくという目的のひとつの考えとして、抗加齢(アンチエイジング)という概念があり、『抗加齢(アンチエイジング)医学』という考えも近年広がってきております。つまり、『アンチエイジング医学』とは元気で長寿を享受することを目指す理論的・実践的科学なのです2-4)

日本人の生存曲線

老化の原因

一般的にいう「老化」とは、からだの成熟が終了した後におこる生理機能の衰退を意味し、外界からの様々なストレスに対する適応能力の低下として認識されます。しかし、老化は非常に複雑で多種多様な形質を発現する過程であり、その概念、定義さえ定まっていないのが現状です3,4)。近年の老化研究の多くは、1978年にMartinが提案した早老症(遺伝的早期老化症候群)の考え方を基礎として進められています3)

下図に示すように、その変化は身体全体に生じ、その具体例として、脳細胞が減少する、水晶体が弾力性を失う、皮膚にハリがなくなる、動脈硬化が進む、心臓病が起こる、背骨が曲がる、骨がもろくなる、骨折する、括約筋が弱くなるなどの変化が生じます。また、老化の原因(老化危険因子)に関しては諸説あり、遺伝子の異変、老廃物の蓄積、フリーラジカルによる体の酸化、免疫力の低下、細胞数の低下、蛋白質・糖質の変性(糖化)などが掲げられています4,5)。特に近年ではフリーラジカルによる酸化に大きな注目が集まっています6)

老化の原因

老化危険因子としての糖化 7)

糖尿病をはじめとした生活習慣病を有するヒトは、体内での糖化が亢進しているために老化が進んでいるといわれています。糖化とは、グリケーション(グリケーション)やメイラード反応とも呼ばれ、近年、アンチエイジングにとって重要な要因であることがわかってきました。図に示すように、ヒトは年齢を重ねていくことにより、AGEs(Advanced Glycation End Products:最終糖化生成物)が体内に蓄積していきます。ところが、糖尿病合併症(網膜症、腎症)、動脈硬化性病変、アルツハイマー病などの病態を有する方は健常者に比べて、AGEsの蓄積が進んでいるといわれています。現段階では、AGEsの蓄積が原因で様々な疾患が発症するのか、逆に疾病の発症に伴いAGEsが生じたのかは不明です。しかし、AGEsが加齢に依存して増加し、さらに糖尿病老化や老化を基礎とする疾患の発症・進展にAGEsが危険因子として作用している可能性が考えられています。

加齢とAGEの蓄積

糖化とAGEs(最終糖化生成物) 8,9)

このAGEsは、糖と蛋白質が非酵素的に結合する糖化(メイラード反応)により生成されます。糖化(メイラード反応)は、糖とアミノ酸の酵素を介さない反応で、その反応は2段階で起こると考えられています。

先ず、糖のアルデヒド基とタンパク質のアミノ基が結合し、可逆的なシッフ塩基が形成されます。シッフ塩基はアマドリ転位によって安定なアマドリ化合物になります。ここまでを初期反応と呼びます。後期反応ではアマドリ化合物に脱水、縮合、酸化、転位などの複雑な多数の反応によって3-デオキシグルコソン(3DG)、メチルグリオキサールなど反応性の高いジカルボニル化合物を産生します。さらに多数の反応経路を経て、不可逆的な最終産物であるAGEsが生成します。

AGEsは糖化(メイラード反応)による最終生成物の総称で、その生成過程の性質から単一なものではなく多様なものであると考えられており、その同定が進行中です。今までに提唱され、比較的研究が進んでいるものとしてカルボキシメチルリジン(CML)、ペントシジン、ピラリンなどが同定されています。

メイラード反応経路図

皮膚と糖化(メイラード反応) 10-13)

身体はそのほとんどがタンパク質で構成されています。皮膚の場合、真皮部分はコラーゲンやエラスチンなどのタンパク質から構成されています。コラーゲンは真皮の約70%を占めており、皮膚のやわらかさはこの真皮部分が深く関与しています。コラーゲンにからみつくようにエラスチンが存在しており、このコラーゲンとエラスチンが、立体構造を作り、その間を保湿成分であるヒアルロン酸などのゼリー状の物質がうめて、肌の弾力やハリを生み出しています。

皮膚のタンパク質であるコラーゲン部分で糖化(メイラード反応)が生じると、タンパク質中のリジン残基のアミノ基あるいはアルギニン残基のグアニジル基と糖のカルボニル基が非酵素的に反応し、シッフ塩基、アマドリ生成物を経た後で、タンパク質とタンパク質を結ぶ架橋構造を形成します。そしてこの架橋構造が形成されると分子が硬くなり、皮膚本来の弾力性が失われてしまいます。また、コラーゲンやエラスチンの架橋により、架橋物を異物と判断し、分解酵素(コラゲナーゼ、エラスターゼ)の分泌量が増えるため、架橋物よりも正常なコラーゲンやエラスチンが分解されやすくなります。これらのことから肌のハリや弾力性が失われ、また肌が脆くなり、さらにはシワ、タルミ、クスミの発生につながります。

皮膚におけるメイラード反応

参考文献

  1. 厚生労働省発表、生命表
  2. 米井嘉一、抗加齢医学入門、慶應義塾大学出版会株式会社(2004)
  3. 日本抗加齢医学会専門医・指導士認定委員会、アンチエイジング医学の基礎と臨床、メディカルビュー社(2005)
  4. 米井嘉一、老化と寿命のしくみ、株式会社日本実業出版社(2004)
  5. アークレイ機能性素材セミナー資料(2006.8)
  6. 近藤和雄、専門医がやさしく教える活性酸素、PHP研究所(2004)
  7. 永井竜児ら、CLINICIAN’98 No476 110(1998)
  8. 繁田幸男ら、蛋白の糖化 AGEの基礎と臨床、医学書院(1997)
  9. 今泉勉、AGEs研究の最前線、メディカルレビュー社(2004)
  10. 藤本大三郎、老化のしくみと寿命、ナツメ社(2001)
  11. 圷信子ら、化学と工業、第53巻、第7号(2000)
  12. 藤本大三郎、コラーゲン、共立出版(1994)
  13. Cerami A. et.al., Sci .Am. 256(5), 90-96 (1987)