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AGEs とポリオール代謝経路

糖代謝におけるポリオール代謝経路

ポリオール代謝経路は糖代謝の副経路として知られ、アルドース還元酵素(aldose reductase:AR)とソルビトール脱水素酵素(sorbitol dehydrogenase:SDH)からなる。ARはNADPHを補酵素としてグルコースをソルビトール(ポリオールの一種)に変換する。ソルビトールはNADを補酵素とするSDHによりフルクトースに変換されポリオール代謝経路を構成する(図1)。

ポリオール代謝経路

図1. ポリオール代謝経路

AR: アルドース還元酵素, SDH: ソルビトール脱水素酵素

糖尿病に伴う高血糖状態では、インスリンに依存しないグルコースの取り込みを行う細胞内のグルコース濃度が上昇し、ARを介するポリオール経路の代謝が亢進する。本代謝経路の亢進は、細胞内NADPHの過剰消費による一酸化窒素(NO)の合成やグルタチオン還元酵素の反応を低下させ、神経組織の血流や神経伝達速度を低下させる。またARによるソルビトール産生がSDHによるフルクトースへの変換を上回ると、細胞内へのソルビトール蓄積が促進される。この結果、ポリオールの持つ化学的性質の一つである高い極性が細胞膜に働き、細胞外へのソルビトール拡散を阻害して細胞内浸透圧の上昇、水分貯留、浮腫状態を引き起こす(浸透圧仮説)。

ポリオール代謝経路と糖化

フルクトースはグルコースよりも数倍強いタンパク質糖化反応を示すことが知られており、ポリオール代謝経路の亢進により生成するフルクトースの組織内濃度上昇が、タンパク質糖化反応を促進させる。また、フルクトースは酵素的リン酸化反応によりフルクトース-3-リン酸(fructose-3-phosphate:F3P)に変換され、F3Pから非酵素的に3DGが生成することも知られている(図2)。

フルクトース代謝

図2. フルクトース代謝

AR: アルドース還元酵素, SDH: ソルビトール脱水素酵素

3DGは極めて反応性の高いジカルボニル化合物であると同時に、糖化反応中間体でもあるため、ポリオール代謝経路の亢進によるフルクトース代謝の亢進が組織内のAGEs生成を増大させることになる。このことは、血液透析を受けている糖尿病患者の赤血球中の3DGとAGEsがAR阻害剤の投与により有意に生成抑制されることや、糖尿用患者の赤血球中CMLとソルビトールおよびフルクトース量の間に正の相関関係が見出されていることから明らかになっている。またARとSDHの酵素タンパク質自身が受ける糖化反応には違いがあり、SDHが糖化を受けると酵素活性の低下を起こす一方、ARへの影響は認められていない。糖化による酵素活性の低下は、ポリオール代謝経路の亢進継続による細胞内ソルビトール蓄積をさらに促進させる要因にもなり得る。

アルドース還元酵素(AR)の作用と阻害剤

ARはポリオール代謝経路の構成酵素としてグルコースを還元してソルビトールに変換するのみならず、生体内のアルデヒドを還元する作用を有している。またARは腎臓、水晶体、網膜、末梢神経に多量に発現しているほか、副腎、生殖器など、生体内組織に広く分布し、副腎や生殖器でイソコルチコイドや17α-ヒドロキシプロゲステロンなどのステロイド代謝に関わり、神経組織においてカテコールアミンやアルデヒドの代謝分解に関わることが知られている。さらにARは膜脂質の過酸化によって生じる4-ヒドロキシノネナールやアクロレインの解毒を触媒することが知られている(図3)。

アルドース還元酵素の作用

図3. アルドース還元酵素の作用

AR: アルドース還元酵素

しかしARの肝臓における発現は極めて低いことから、肝臓以外の組織での解毒作用を機能させていると考えられている。すでに、AR阻害剤が糖尿病合併症治療薬として国内外で多数開発されている。そのうち、エパルレスタット(医薬品名:キネダック)が臨床使用されている(図4)。

アルドース還元酵素阻害剤「エパルレスタット」

図4. アルドース還元酵素阻害剤「エパルレスタット」

一般名: エパルレスタット(epalrestat)
化学名: 5-[(1, 2)-2-methyl-3-phenylpropenylidene]-4-oxo-2-thioxo-3-thiazolidineacetic acid
分子式: C15H13NO3S2
分子量: 319.4

また、糖尿病患者にAR阻害剤を投与すると赤血球中AGEs量が低下することが報告されている。これは、ポリオール代謝経路を介するフルクトースの生成およびフルクトース代謝に由来する3DGの生成が抑制されたことによるAGEs生成量の低下現象と考えられている。

参考文献

  1. 繁田幸雄ら(編), 蛋白の糖化 AGEの基礎と臨床, 163pp, 医学書院, 1997.
  2. 山岸昌一(編), AGEs研究の最前線 糖化蛋白関連疾患研究の現状, 231pp, メディカルレビュー社, 2004.
  3. 井村裕夫ら(編), 糖尿病の分子生物学 実験医学増刊 9(5), 200pp, 羊土社, 1991.